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【労働力の移動から人間の移動へ−游さんに学びたいこと】

 游さんにはじめてお会いした日は私の記憶と学術記録にはっきりと留められている。1973年10月23日、宝塚市で開かれた第9回国際経済研究会で游さんと私が国際労働力移動について報告した時で、30年も前のことだ。この研究会は、国際経済学会のマルクス経済学系の若手が学会全国大会の前後に集まって主に方法論問題を自由に討論する研究会で、ながらく途絶えていたものが中川信義さんの努力で再開されたもので、その復活第1回目だったと思う。

 宝塚での私ども2人の報告は今でも先駆的な仕事と評価されることもあるが、游さんの報告が彼の出自に関わって迫力あるものであったのに対し、私のはヨーロッパの外国人労働者問題を帝国主義論の論理で組み直しただけのものだった。このテーマについての私の方法の稚拙さをどのように克服するかについて、私はあれ以来ずっと考え続けている。

 経済学は貨幣表現された市場関係にばかり焦点を合わせ、人間の経済活動の全体が見えなくなっているように思えてならない。人間の移動も同じで、労働力という側面だけを生産要素として暴力的に切り取って観察する方法は、人間の尊厳に対する不遜な態度であるだけでなく、その経済的、社会的本性の全体を見失わせ、急速に進む歴史の流れと経済学の接合は絶望的なものになりかねない。21世紀は環境の世紀といわれる。地球環境の変動により人間の大規模な移動は避けられない。「9月11日」は21世紀は戦争の世紀になることを予告する象徴的事件であった。グローバル資本主義の下で工業的発展が地球大化する一方で、そこに参加できない国々を見捨て揉潤する過程が急速に進んでいる。21世紀が人間移動の世紀になることは確実であろう。経済学が自己変革に直面しているだけでなく、人間移動の研究も変わらなければならない。

 学会出不精の私は游さんとお会いする機会はあまりない。それなのに、自分でも不思議に思うくらい長くつながっていたいと念じるのは、游さんとの出会いを思い起こし、自分の出発点での無知と欠陥を恥じ、彼の仕事に畏敬の念を常に抱いているからである。游さんにこれからもひそかに学んでいきたいと思う。
(游仲勲先生古希記念論文集編集委員会『游仲勲先生古希記念一言集』2003年5月」)
  
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